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2021年3月14日

デザイナー コシノジュンコの語録「56の大丈夫」

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デザイナー コシノジュンコ

大丈夫。エネルギーの塊のような著者がそう言うのなら、先の見えない日々にあっても、何とか乗り切れそうな気がする。

新型コロナウイルスの感染拡大で私たちの行動は制限され、仕事も生活も変化をせまられている。でも「昔はよかったねって後ろを振り返るのは、違う」ときっぱり。「前向きに今、できることをする」のがコシノジュンコ流だ。

逆境はバネに、失敗は教訓にすればいい。コンプレックスも自分の心ひとつで力に変えられる。本書は第一線で活躍し続ける著者ならではの、力強い言葉を詰め込んだ語録。自らの経験を織り交ぜながら、読者に励ましのエールを送る。

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実際、本はコロナ禍を奇貨として生まれたという。「一日中、家にいることなんて今までなかったから...」

中国、キューバ、ロシア、スペインなど世界各地でショーを開き、ファッションを通じた国際文化交流に長年、力を注いできた。近年も、能とファッションを組み合わせた華麗なショーをパリで披露するなど、海外と日本を忙しく行き来していた。ところが昨年2月にパリから戻って以来、国内外の様相は一変し、未知なる自粛生活がスタート。「時間があるというのは本当に退屈。有意義なものにするために目的を持とう、と」

ちょうど温めていた案があった。「うちわに絵と言葉を書き、パリで展覧会をしようと思っていたんです」。芸舞妓(げいまいこ)が使う伝統的な京うちわに、さらさらと絵と文字を入れてゆく。その数、150本。かねて本を出す計画もあり、「『コシノジュンコのうちわ話』として出すことも考えましたけど(笑)。今回は、言葉に絞って一冊にまとめてみました」とほほえむ。「たくさんの言葉の中から、読む人が一つでも二つでも、心に響く言葉を見つけてくれたらうれしいですね」

全体として浮かび上がるのは、今を大切に生きる姿勢だ。

<大丈夫。今がいちばん若い>

生きているうえで、一番若いのは「今」だと説く。昔を振り返っても時間のムダ。「もう若くない」と年齢を理由に何かをあきらめるのもナンセンス。「私たちが生きているのは確実に今日、今なんです」。今日を大切に、今の自分を生かすことが重要だと語りかける。

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金言だけでなく、1960~80年代を中心に秘蔵写真もふんだんに収録。「サイケの女王」と呼ばれた若かりしコシノさんの大胆な装いや、懐かしいグループサウンズの衣装、パリコレのショーなど、見ごたえは十分。俳優、歌手、画家などジャンルを超えた華やかな交友、時代の息遣いも伝えてくれる。

中でも、親友で良きライバルでもあったデザイナー、高田賢三さんとの出会いは「大きな宝物」だと語る。文化服装学院(東京)の同期生として18歳で出会い、互いに影響を受けながら切磋琢磨してきた。昨年2月にパリで、高田さんが新たに立ち上げたインテリアブランドの展示会を訪れ、「また一緒に仕事をやりたいね」と語り合い、共に食事を楽しんだという。「まさかそれが最後になるなんて、まさか賢三さんが(昨年10月に)コロナの感染症で亡くなるなんて、思いもしなかった...」

いま胸に広がるのは「賢三さんの最後を見た。彼の最後の仕事を見届けた」という思いだ。天に召されても、「作品や名声は残る」。その揺るぎない事実が、悲しみを少し和らげてくれる。既に鬼籍に入った友人も多いが、思い出は色あせない。

<誠意は人を動かす。感謝は幸せを呼ぶ>

改めて、人生を豊かにしてくれるのは人、なのだ。「大丈夫っていう漢字をよく見ると、全部『人』が入ってるんです」。人を奮い立たせてくれる魔法の言葉。大丈夫、コロナ時代でも明るい未来は切り開ける。

3つのQ

Qリフレッシュの方法は?
朝、ジムに行く。走るにせよ泳ぐにせよ、前に進むのがいい。頭がクリアになり気持ちも前を向く

Q得意なスポーツは?
卓球。(五輪メダリストの)福原愛さんとは、彼女が6歳のときに対戦して以来、長いお付き合いです

Qおもてなし料理の定番は?
赤ワインに合う、フォアグラ入りお好み焼き。大阪にもどこにもない、オリジナルです

(文化部 黒沢綾子)

 

《コシノジュンコ》
 公式HP http://junkokoshino.com/

(産経ニュースより)