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2021年9月15日

【第2回】「ロナルド・ヴェンチューラ展-内省」展示室と作品の関係性について

軽井沢ニューアートミュージアムで開催中の、アジアを代表するフィリピン出身のアーティスト:ロナルド・ヴェンチューラの過去最大規模の作品群を見ることができる「ロナルド・ヴェンチューラ展-内省」。
前回に引き続き、第2回目の今回は学芸員の石川さんに展示室と作品の関係性、またヴェンチューラの少し難解に見える作品の楽しみ方を教えていただきました。
古典作品との関連を念頭に置いて鑑賞すると、また違った鑑賞体験が出来そうです。

■古典美術・オマージュ・引用
本展は6つの部屋で構成している展覧会ですが、その第5展示室では入口から様々な小型の彫刻作品を神に仕える使徒のように並べて配置し、一番奥には大型の絵画「キリストの磔刑図(たっけいず)」をモチーフに描いている作品を架けています。

第5展示室

第5展示室

西洋宗教絵画の代表的な題材を取り上げていますが、キリストの頭上にはCLASSICの文字が看板のように表現され、金属製の棘でその表情は隠され、キリストのまわりには天使の代わりに羽の生えた宇宙飛行士、恐竜親子の骸骨、漫画のようなシンプルな線で描かれたバナナを持ったサルのキャラクターと様式化されたバナナの木、ギリシャ建築の柱が配置されています。
ヴェンチューラは古典的な宗教絵画のスタイルに現代社会の諸様相を巧妙に盛り込むことで別の意味を持つ図像に置き換えてしまいました。古典絵画の題材である永遠の敬虔さはここでは別の意味を持たされ、現代社会の様々な記号のひとつとして呈示されています。

ロナルド・ヴェンチューラ 《無題》2021年 油彩、キャンバス 304.8×213.4cm

ロナルド・ヴェンチューラ 《無題》2021年 油彩、キャンバス 304.8×213.4cm

この部屋で注目して欲しいもうひとつの作品は《オーバーディフェンス》です。野球の乱闘シーンが描かれた作品で、モノクロ写真のように精密に描写された選手たちの姿、戦場カメラマンや虎、サル、うさぎ、猫、犬、野球ボールの顔をした人間などがにぎやかにうごめき、いくつかの水玉は絵画にポップな現代性を加味しています。

ロナルド・ヴェンチューラ《オーバーディフェンス》 2017年 油彩・キャンバス 182.9×274.3cm

ロナルド・ヴェンチューラ《オーバーディフェンス》 2017年 油彩・キャンバス 182.9×274.3cm

本作は19世紀ロマン主義絵画の代表作として有名なドラクロワの《民衆を導く自由の女神》の構図を引用しており、個々のモチーフは異なってもその違いを超えて、元になる作品の構図と迫力は維持されています。ヴェンチューラの西洋美術と歴史に対する敬意と、それを超えて新しい世界を作り出そうとするエネルギーは、先人の芸術家への現代作家としての回答なのです。

(軽井沢ニューアートミュージアム 学芸員 石川なみ乃)

《開催概要》
「ロナルド・ヴェンチューラ展-内省 Ronald Ventura-An Introspective」
【会期】2021年8月7日(土)~2022年4月10日(日)
【会場】軽井沢ニューアートミュージアム 第1~第6展示室(2階)
【企画・主催】ロナルド・ヴェンチューラ スタジオ、一般財団法人Karuizawa New Art Museum、産経新聞社
公式HP:https://knam.jp/