
最優秀賞・産経新聞社賞 「雪原の川」 横田國平(新潟県)
美しい日本の風景をアマチュア写真家が撮影するフォトコンテスト「第11回 美しい日本を撮ろう」(産経新聞社主催、環境省後援)の入賞・入選作品が決まった。応募作品803点の中から25点が入賞、16点が入選した。各賞の受賞者は以下の通り。
最優秀賞・産経新聞社賞=横田國平(新潟県)=写真▽優秀賞・シャネル賞=大木島毅(東京都)▽秀作・ミセス賞=入江勤(京都府)▽秀作・オンワード樫山賞=小松原喜久子(東京都)▽秀作=森田芳隆(神奈川県)▽25ans賞=林大作(神奈川県)▽婦人画報賞=細貝辰徳(東京都)▽東武百貨店賞=熊木恵子(東京都)▽資生堂賞=嶋田亨(長野県)▽三井不動産賞=谷中邦夫(茨城県)▽大王製紙賞=塚本威(茨城県)▽明治の館賞=上原延元(栃木県)▽サンケイスポーツ賞=野木道弘(福島県)▽metropolitana賞=島貫一郎(山形県)▽雑誌「正論」賞=奥西勲(三重県)▽サンケイリビング新聞社賞=新美東子(東京都)▽フジテレビジョン賞=伊藤徹威(千葉県)▽明治安田生命賞=市川明(東京都)▽モーストリー・クラシック賞=草部清(大阪府)▽TVnavi賞=山口智之(栃木県)▽夕刊フジ賞=髙橋好之(茨城県)▽ニッポン放送賞=金沢靖広(神奈川県)▽SANKEI EXPRESS賞=岩田進(埼玉県)▽扶桑社賞=トリチョーブ・セッタポン(神奈川県)▽フジサンケイ ビジネスアイ賞=内田俊也(東京都)=敬称略
入選作品
入賞・入選作品は、10月6日から以下の展示会場で展示される。
葉山文化園(神奈川県葉山町) 10月6日-13日
東武宇都宮百貨店「イベントプラザ」(栃木県宇都宮市) 10月17日-21日
クリスタ長堀ギャラリー(大阪市中央区) 10月25日-30日
東京サンケイビル「ブリックギャラリー」(東京都千代田区) 11月2日-10日
【審査委員】
審査委員長 福原義春(東京都写真美術館館長)
審査委員 秋元康(作詞家)、安珠(写真家)、大出一博(ファッションプロデューサー)、岡崎成美(『ミセス』編集長)、北山孝雄 (プロデューサー)、隈研吾(建築家)、三枝成彰(作曲家)、新原昇平(三井不動産日本橋まちづくり推進部長、十河ひろ美(『25ans』編集長)、髙田賢三 (デザイナー)、出口由美(『婦人画報』編集長)、HASHI(写真家)、リシャール・コラス(シャネル日本法人代表取締役社長)、渡辺照明 (産経新聞社写真報道局長)=五十音順、敬称略
審査員のコメント
●審査委員長
東京都写真美術館館長 福原義春氏
例年並み、いえ、それ以上の作品が多数集まりました。ただこうしてみると、写真というのは本当に難しいと思いますね。ありのままを写してきても作品にはなりえません。力強い訴えるインパクトがあるかどうかが必要なんじゃないか。(よい作品は)必ずしも偶然でできるわけではないんですね。作家自身が何回も通って、チャンスを見つける、光の条件が合った時に叶えられるとか...、いろいろはことが必要になってきます。上位に入ってきたものは、それなりのインパクトがありますね。(カメラを)向ければ写ってしまう時代ですが、それだけに作品をつくるというのは難しくなってきました。上位入賞作品は、やはりインパクトがあります。
●審査員
プロデューサー 北山孝雄氏
日本の文化、日本の歴史、日本の自然をどうして取り戻すか。日本全体の課題の一つになっていると思っています。戦後、高度成長期にいろいろなものを乱暴に作ってきましたが、そうしたものを取り除いて、美しい日本の自然に戻すという動きが活発する中、この写真展はその一助になればと思っています。(写真というのは)きれいなところだけを切り取っています、これを360度に目を移せば、電柱とか、超高層ビルとか、いろいろと嫌なものが出てきます。それを取り除いていったものが、基点の一つになればと思っています。
三井不動産日本橋まちづくり推進部長 新原昇平氏
風景や景色を写したものが増えてきて、人が関わる、人と一緒に、人の生活を写した作品が減ってきていると感じています。今年は、山や川などの写真を捉えたものが多く、毎年同じような日本の景色を写した作品が出てきます。その中で人の暮らしがわかるものや、日本の良さを写した作品が減ったと思います。三井不動産賞に選んだ作品は、人は写ってはいませんが、人の匂いや生活感が出ている作品を選びました。
写真家 HASHI氏
今回、幻想的な写真とか風景とかの作品が選ばれましたが、それはそれでよいなと思っています。もっと多岐にわたった方が面白いと思いました。いろいろなシーンですね、美しい日本だから、次回応募する人は、違った感じの作品、今回選ばれていないような作品を出したらどうかなと思います。
もう11回目になりましたから、いままでの作品をトータル的に出したら、かなり面白い日本のシーンがあると思う。11年目になりますから時代の変遷とともに全然違うものが出てきます。そういう作品を見てみたいですね。
写真家 安珠氏
クオリティーは年々高くなっています。いかにも絵葉書といったものは外され、撮り手の日本の美しさ、深さをくすぐるような作品かどうかがポイントになってきています。そういう意味で、1点で応募するより数点で応募されてほしいなと思います。
「ミセス」編集長 岡崎成美氏
ここ何年かのうちに、レベルの感性のすばらしい自分をしっかり出している作品群と、そうではなくてカメラの技術力に頼っている作品群に分かれていますね。(審査をしていて)一発で手を挙げたくなるものと、これは、見ない方がましだねという方に分かれ出した顕著な年ですね、それがすごくわかりました。
逆に言うと、いかに技術力があっても、自分を出すというか、自分はこれをやりたいんだという、自分はこういう視点をもつんだ、自分はこういうふうに世の中を見るんだ、日本の自然を自分はこうしっかりと捉えたい、強い欲求があるということの有無が写真の出来、不出来を決めるのかがという気がしました。たしかにそういう気持ちが出ているかどうかでいい作品となるかどうかがになっている。私はそういう作品を見たい。
シャネル日本法人代表取締役社長
全体的に質が落ちているね。いいもの少なくなって。全体的によきみなさんが自分の写真がふつうなのにいいと思っているんですね。オリジナルとかが少ないなあ。だれでも自分がカメラマンになれると思っているのでしょう。だがトップの写真はいいよね。間違いないね。
作曲家 三枝成彰氏
とても素人とは思えない作品が多かった。どうやって撮ったのかなと思える作品があった。私が嬉しかったのは、ドラマを感じさせる作品が2つありました。一つは、「嵐が丘」で、もう一つは、田舎堤で若い青年たちが写っている作品。ストーリー性のある作品はうれしいね。匂いのある作品、匂ってくる作品というのかな。こういう作品は、うれしいね。
それがあってうれしいね。
「25ans」編集長 十河ひろ美
ずっと拝見していてやはり応募者の技術力が年々あがっていということと、やはりアマチュアの人のこうした写真を撮る人が増えていうのでということを作品を見て感じました。
ただ、画一的になっているかなと。どこかで見たことのある風景だったり、写真だったりすると、回を重ねていくとそう感じました。どこかで見たことのある風景だったり、写真だったりと、どうしても「美しい日本」という捉え方が、日本の美しい風景などに陥りがちかなと思うところもあり、「美しい日本」というわかりやすいタイトルだけに、わかいやすい写真はメーンになっているということが否めず、もっと新しい解釈による、美しい日本の切り取り方、あり方が増えても良いのではないか。第2段階に来ているのでしょう。
あるいは第2ステージに期待したい。みんなきれい、みんな腕もいい、だが鮮度に欠けている。全部でなくてよいから、「おっ、こういう切り取り方もあってよいのだな」とスパイスした写真があって良いのではないか。
ふくろうが2羽写っている写真がありましたが、2羽とも目線がこっちに来ていて、こういうアングルはむずかしいではなりませんか。やはり瞬間を撮っているが、それを選んでみました。
産経新聞写真報道局長 渡辺照明氏
応募作品の多くにレベルアップが感じられた。特に最優秀賞は満点の星空と地平線の残照を一緒に写し込んだ不思議な光景が受賞した。撮影ポイントガイドなどに紹介されている定番的な風景ではなかっただけに新鮮だった。全般的には夕景などプライムタイムをうまく撮影した風景が多数入賞したが、人の動きをうまく配したスナップの応募が少ないのが気になった。今後は風景の中に人の生活が感じられるシーンを切り取った写真に期待したい。
作詞家 秋元康氏
写真には、言語がある。美しい写真には、美しい言葉がある。今回、集まった写真を机に広げ眺めていたら、いくつもの言葉が浮かんできた。そのどれもが美しい日本を語っていた。僕はその応募作品のひとつひとつに耳を傾け、会話しながら審査した。僕は写真の素人だから技術的なことはわからない。それでも僕は、まるで、一篇の詩のように雄弁な写真を手にしていた。
ファッションプロデューサー 大出一博氏
機械(カメラ)の目でなく、人の目で見たときのような作品が好きです。人の目は、一カ所を見ると、他のものはボケて見えます。デジタルカメラもアナログカメラも、絞りを開いてみれば、必要のないものはボケてきて、自分の意図する写真を撮ることができます。僕は、そういう自然のままの作品に出会いたい。
建築家 隈 研吾氏
美しい日本を撮ろう」フォトコンテストの開催、おめでとうございます。日本には、世界に誇れるすばらしい景色が点在していると感じました。われわれ日本人は、美しい自然を背景に人が日々の営みを続け、つながり、文化を創ってきました。そして、すべての要素が調和したところに現在の日本があり、「美しい日本」の未来があるんだと思います。まさに、産経新聞創刊80周年記念企画にふさわしいフォトコンテスト。次回もまた美しい作品で出会えることを心から楽しみにしています。
ファッションデザイナー 高田賢三氏
今回選ばさせていただきました作品(扶桑社賞)からは、とくに日本の四季・春から秋へと移りゆく季節が感じられました。アルプスにはまだ少し雪が残っていて、雪解け水が川に流れ込み、春の訪れとともに、壮大な鯉のぼりが自然界で泳いでいる。そんな日本独特の伝統的な行事や、自分の故郷である日本の穏やかな風景が、懐かしく心を和ませてくれました。美しい日本の風景は、ある時は強く、ある時は穏やかに、そして温かく人の心に刻まれます。この数年は天災によって、残念ながら変わってしまった風景もありますが、この美しい日本の風景を次世代につなげていくことが、今後の日本の力になっていくのだと思います。
「婦人画報」編集長 出口由美氏
今年も昨年同様、日本の雄大な自然を中心にした作品が、たくさんの作品から日本固有の風土の安らぎを感じることができました。「美しい日本を撮ろう」フォトコンテストは、日本人であることの喜びを再認識できる貴重な場だと思います。震災、復興、そして東京オリンピックと、世界が「日本」を注視しているいま、また新しい日本の美しさを発見できる場になっていければと思います。